韓国ドラマや韓国映画でよく見る食事のシーン。
韓国の食事マナーとしての座り方・・・女優さんが立て膝でご飯を食べる姿を見て「行儀が悪いな~」と思った方もいるのでは…。
私も最初はそう思っていましたが、韓国へ旅行に行ったり韓国の友人とご飯を食べたりするうちに韓国の食事マナーとして左手の置き場に困ったことも理解が深まっていきました。
韓国の食事マナーは座り方だけでなく、左手の置き場所、儒教の影響など日本にはないものがたくさんあります。
ここでは韓国の食事マナーで押さえておきたいいくつかのポイントを分かりやすくご紹介していきます。
韓国の食事マナー座り方は立て膝が正解?
韓国の食事マナーで気になる座り方を紹介します。
韓国で立て膝は女性のたしなみ
実は、韓国では立て膝で座るのが女性のたしなみなのです。
座卓で食べる時は立て膝が正解
日本では、立て膝=行儀が悪いと思いがちですが、実は韓国では女性のたしなみの一つと言われています。
女性の正式な座り方なので、決して行儀が悪いわけではないんですね。
ドラマでよく見るみんなでワイワイ食べる食事のシーン。
よく見ると座卓を囲んで食べていますよね。立て膝が正式な座り方になるのは、座卓で食べる場合に限ってのこと。
例えばテーブルとイスでご飯を食べる場合は、立て膝はしません。
ドラマでも椅子に座った女優さんが、立て膝で食事をするシーンは見ないですよね。
女性の立て膝がOKなのは、あくまで座卓で食事をとるシチュエーションの時だけと覚えておきましょう。
女性の胡坐はマナー違反?
女性の胡坐(こざ:あぐら)もマナー違反ではありませんが、シチュエーションを選ぶ場合があります。
例えば、カジュアルな雰囲気のお店で友達同士で食事をする場合などは胡坐をかいてもOK。
スカートを履いていても、靴を脱いで座るような場合は胡坐をかくことは許されています。
冠婚葬祭や仕事の接待など正式な食事の場合は、胡坐で食事をするのは良くない印象を与えるので注意が必要です。
胡坐はマナー違反ではありませんが、正式な場所では避けた方が無難ですよ。
男性の正式な座り方
男性の正式な座り方は胡坐ですが、これも女性の時と同様で座卓で食事をとる時の座り方になります。
女性の場合は立て膝が正式な座り方でしたが、男性の立て膝は「マナー違反ではないけど…」という感じ。
一般的にほとんどの男性は胡坐をかいて食事をするので、正式な座り方は胡坐と思っておいた方がいいですよ。
立て膝をするのはなぜ?
チマチョゴリの影響
韓国のチマチョゴリと言えば、ふわっとしたスカートを思い浮かべる人が多いですよね。
チマチョゴリをより美しく見せるために最適な座り方が立て膝だったというのが理由の一つだと言われています。
日本人からすれば、スカートで立て膝をすると下着が見えてしまうのでは…と少し心配になるかもしれません。
実はチマチョゴリの下にズボン型の下着を身につけているので、立て膝になっても大丈夫なんですね。
そもそも立て膝文化が始まったのは韓服が日常着だった時代から。
食事も給仕も韓服で行っていたので、見た目の美しさと共に給仕のしやすさも求められていました。
立て膝ならチマチョゴリを美しく見せ、給仕がしやすく、座っていても楽と、良いことづくしだったんですね。
韓服の時代から受け継がれてきた「立て膝」の礼節が、洋服を着るようになってからも受け継がれています。
社会的地位も関係していた
韓国ドラマの中でも人気の高い時代劇。
朝鮮王朝時代は社会的地位による違いが大きい時代でもありましたが、座り方もその影響を受けていました。
当時の支配階級は「両班」(ヤンバン)と呼ばれていましたが、身分の違いで座り方が違っていました。
座り方=社会的な地位だったんですね。
日本語の「胡座」(こざ・あぐら)は、韓国語では「両班足」(ヤンバンダリ)と呼ばれます。
つまり胡坐は支配階級の男性たちの正式な座り方。
支配階級の男性たちは胡坐、女性は立て膝と身分や性別によって座り方が違っていました。
今では支配階級の制度はありませんが、当時の名残りが韓国語にも作法にも残っているということです。
オンドルの構造も影響している
12月に韓国に行った時にあまりの寒さに震えていたら、「来月からはもっと寒くなるよ」と言われて驚いたことがあります。
韓国の冬は日本に比べると格段に寒いので、オンドル(床暖房)が必須。
オンドルというのは床暖房の事で、韓国の女性が立て膝でふわっと座るとチマチョゴリの中で床の暖かさを逃さずに座れるという理由もあります。
どんな時に正座をするの?
韓国では正座をあまりしない
正座というと日本では行儀が良い、丁寧、品が良いなど良い印象がありますよね。
シチュエーションを選ばず万人受けする正座ですが、韓国ではあまり正座をすることがありません。
もともとは身分の低い人が上の階級の人の前に出た時の座り方だったので、昔の支配階級の人は正座をしませんでした。
今でも正座は特別なシチュエーションの時だけ使われる座り方です。
韓国の冠婚葬祭
正式な場で最も丁寧とされる座り方が正座。
韓国では、お葬式や結婚式などの正式な場であいさつをする時に正座をします。
教会やお寺などで祈りをささげるような厳かな場面でも正座をし、上下関係がある中で下の人が上の人に敬意を示すときにも使われます。
罪人の座り方
日本には「土下座」の文化がありますが、韓国の正座もそれに近い感覚があります。
罪を犯した者が位が高い者に許しを請うような場面で使います。
韓国では正座は「罰を受ける罪人の座り方」という印象があるので、誰かに叱責されるときや謝罪する時などにも正座をします。
日本人はカジュアルな場面でも正式な場でも正座をしますが、韓国人が正座をする場面は限定されているということですね。
韓国での食事マナー左手はどうする?
韓国で食事マナーとして左手の使い方を紹介します。
食事マナーで覚えておきたいルール
器は左手で持ち上げない
韓国の食事マナーで絶対に覚えておきたいルールの一つは左でで「器を持ち上げない」。
日本では右手で箸を持った場合、左手で器を持ち上げて食事をしますよね。
子供の時にお茶碗を手に持って食べるようにと教えられた人も多いのではないでしょうか。
韓国ではお茶碗を持ち上げるのはNGです。
テーブルの上に置いたまま、スプーンを使ってご飯を食べます。
スプーンを持っていない左手は、器にそっと添えるだけでOKです。
なぜ器を手で持たないの?
お茶碗を持ちあげない理由の一つは韓国の食器の素材と形にあります。
韓国のお茶碗は金属製なので、熱々のご飯が入った状態では持つことができません。
また、昔から使われてきた伝統的な食器は「ノッキ」という鉄器だったので、重くて手に持って食べることができませんでした。
他にも汁は長くて平たい食器に入れるので手で持ちにくく、スプーンですくって食べる方が食べやすいという理由もあります。
温かい料理のマナー
温かい料理は冷めないように
韓国では温かい料理は冷まさないようにして頂くというテーブルマナーがあります。
料理が冷めないために温かい料理はスプーンや箸の近い場所に置いてあります。
日本では汁物はお椀を口元まで持ち上げて飲みますが、韓国ではスプーンですくって飲むのがマナーです。
スープにご飯を入れて食べる
代表的な韓国のスープ料理と言えばチゲスープ。
日本では汁物の中にご飯を入れて食べるのは行儀のよい食べ方ではないですよね。
でもこの食べ方は韓国ではOK。
チゲの中にご飯を入れて食べるのは普通のことなので、チゲスープを食べる時はぜひチャレンジしてみて下さいね。
その他覚えておきたい韓国食事マナー
音を立てて食べてもOK
クチャクチャと音を立てて食べることは日本では行儀が悪い食べ方とされています。
ドラマで好きな韓流スターがクチャクチャと音を立てながら食事をするシーンをみてショックを受けたことがある人も多いのでは。
でも韓国では音を立てて食べることは決して行儀が悪いことではありません。
これは「ご飯を美味しく頂いている」という意味になるので、好意的に受け止められるんですね。
日本でも麺類を食べる時に音を立ててすすりますよね。
韓国の音を立てる文化は日本のすすり文化と似ているのかもしれません。
韓国では食事を食べ残してもOK
日本人は子供の頃に「ご飯粒を残さない」「食べ残しはもったいない」と教えられた記憶がありませんか?
幼い頃私は「ご飯粒を残すと目が潰れる」と教育されてきました。
残さず食べきることが美徳とされている日本とは違い、韓国では食べ残しが好意的に受け止められています。
ご飯を全て食べきることは「まだ食べ足りない」という意味に、少し食べ残すことは「お腹いっぱいで満足した」というサインになります。
韓国では食べきれないほどの量を振舞うことが最高のおもてなしとされていたので、少し食べ残す文化はその名残りかもしれませんね。
大量に食べ残してしまうと失礼になってしまうので、少しだけ食べ残すのがポイントですよ。
韓国の食事マナーは儒教の影響を受けてる?
韓国での食事マナーは儒教的要素が強くあります。
年長者がいる席での食事のマナー
韓国の食事マナーは儒教の影響を受けているので、自分より上の人を敬うルールがあります。
自分より上の人とは、年長者や上司、自分より偉い人のこと。
例えば年長者と一緒に食事をする場合に、相手より先に食べるのはNGです。
年長者が料理を食べ始めたのを確認してから、他の人もご飯を食べ始めます。
また、食事を終わらせるタイミングも年長者に合わせるのがマナー。
お腹がいっぱいになったからと言って年下の人が先に食事を終わらせるのはマナー違反になります。
年長者の行動に合わせながらの食事は少し緊張しますが、「食べていいよ」とサインを出してくれる年長者もいるそうですよ。
年長者がいる席でのお酒のマナー
お酒を注ぐ時
まずは年長者にお酒を注ぐのがマナー。
年長者より先に自分のグラスにお酒を注いだり、お酒を飲むのはご法度です。
お酒を注ぐときは左手を右腕(お酒を注ぐ手)に添えて注ぐのが正しい方法です。
反対に年長者からお酒を注いでもらう時は、両手でグラスを持って礼儀正しくお酒を注いでもらうのが基本。
韓国では年長者の前でお酒を飲むのはNG、年長者からお酒を勧められた場合は飲んでもOKという考え方があります。
勧められてもいないのにお酒を飲むのはマナー違反になるので注意してくださいね。
お酒を飲む時
お酒の飲み方にもマナーがあります。
年長者と同じ席でお酒を飲む時は、正面を向いて飲むのはマナー違反。
顔を横に向け、口元を左手で隠して飲むのが礼儀であり作法です。
欧米や日本でこの飲み方をすると相手に失礼な印象を与えますが、韓国では正面を向いて豪快にお酒を飲むのはマナー違反になります。
お酒を注ぎ足す時
相手のお酒がグラスからなくなりそうになったら、途中で注ぎ足すのが日本のマナーですよね。
韓国ではグラスから完全にお酒がなくなってから注ぎ足すのがマナーです。
グラスのお酒がまだ残っているのに注ぎ足してしまうと失礼に当たります。
日本と韓国ではマナーが逆なんですね。
このマナーは年長者だけでなく友達や家族と飲む場合も同じなので、失礼にならないよう気をつけてくださいね。
まとめ
韓国の食事マナーの座り方として女性の正式な座り方は立て膝、男性の座り方は胡坐。
立て膝にはチマチョゴリや社会的地位、オンドルの影響があり、決して行儀が悪いわけではないことが分かりましたね。
韓国での食事マナーは器を持ちあげて食べるのはNGなので、左手はそっと器に添える程度が礼儀であり作法です。
韓国の食事マナーは儒教の影響を受けているので、上下関係が厳しめです。
食事の席に年長者がいる時は、食事の始めと終わりのタイミングを年長者に合わせましょう。
お酒の席ではまず年長者にお酒を注ぎ、勧められたら横を向いて口元を隠していただくのが正しいマナーです。